高校を出たあとの16年 - 中3の頃の家族形態が、 いまの暮らしに残っている

求職活動中の若者の50.0%が暮らし向きは苦しいと答え、25.7%が経済的理由で受診を我慢した経験がある。働く若者の最終学歴が高校である割合は、中3の頃が母子のみ世帯だった層で67.5%と両親世帯の倍以上。

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課題発見

子どもの貧困は、18歳で終わるわけではない。北海道が高校卒業後の若者2,003人に尋ねた調査は、中学3年の頃の家族形態が、その後の進学と就労と暮らし向きに残り続けていることを示している。

1. 数値で見る現状

ファクト: 北海道が2019年度に実施した若者生活実態調査で、現在の暮らし向きが「苦しい」と答えた割合は 求職活動中の若者50.0% ・ 大学生27.8% ・ 働く若者27.1%だった。有効回答2,003票。出典: 北海道若者生活実態調査 ↗ ・ 北海道

ファクト: 経済的な理由で過去1年に病院や歯医者に行くのを我慢した経験があると答えた割合は 求職活動中25.7% ・ 大学生14.6% ・ 働く若者14.3%。

ファクト: 仕送りのやりとりが全くないと答えた割合は 求職活動中86.8% ・ 大学生63.7%。中3の頃が母子のみ世帯だった層でその割合が高く、求職活動中の母子のみ世帯では100%だった。

ファクト: 大学生の対象は道内12校で、名寄市立大学と稚内北星学園大学を含む。求職活動中の若者はジョブカフェ利用者、働く若者は道内事業所に勤める概ね39歳以下が対象。

2. 過去の家族形態が残る形

ファクト: 働く若者の最終学歴が「高等学校」である割合は全体で31.1%。中3の頃が母子のみ世帯だった層では67.5%で、両親世帯の倍以上にあたる。

ファクト: 経済的な理由で当初の希望進学先をあきらめた経験が「あてはまる」と答えた大学生は13.0%。母子のみ世帯でその割合が高い。

ファクト: 奨学金の利用は、母子のみ世帯で 大学生68.6% ・ 求職活動中45.8%。働く若者では家族形態による差が現れていない。

ファクト: 経済的な支援が親に期待できるかについて、3区分すべてで母子のみ世帯が「期待できない」と答える割合が高い。

推論: 中3の頃という15年前後前の状況が、現在の学歴と暮らし向きに関係しているという結果は、その間に働いた要因が進学の段階に集中していることを示唆する。希望進学先の変更13.0%、奨学金利用68.6%、仕送りなし100%という数字は、いずれも進学を選ぶ時点と、選んだあとの継続に関わっている。

推論: 働く若者では家族形態による差が小さくなる項目がある ( 暮らし向き、奨学金利用 ) 一方で、最終学歴の差は残る。就労が始まれば当座の収入差は縮まるが、学歴という形で残った差はその後も動きにくいと読める。

3. 論点

中心問い: 支援が届く時期と、差が生まれる時期は合っているか。

ファクト: 子どもの貧困対策として整備されている制度の多くは、就学中の子どもと保護者を対象にしている。第2回子どもの生活実態調査で扱われたスクールソーシャルワーカー・スクールカウンセラーも、対象は小2〜高2にあたる。

ファクト: 一方この調査で最も暮らし向きが苦しいのは、高校卒業後で就労前の求職活動中の若者 ( 50.0% ) だった。

仮説: 高校の在学中は学校という接点があり、卒業後に就職すれば職場という接点ができる。そのあいだの、進学した先で経済的に苦しい時期と、就職先が決まっていない時期に、接点が薄くなる。暮らし向きの数字がこの時期に高く出ることと、接点の薄さは関係していると考えられる。

ファクト: 望ましい若者支援策として最も割合が高いのは、大学生と働く若者が「子育て費用の軽減」、求職活動中が「職場環境改善」。行政の窓口で相談することについては、大学生が「生活困窮で困ったとき」、求職活動中が「就職・就労で困ったとき」、働く若者が「家族の介護で困ったとき」で最も高い。

4. 地域で担えること

進学の時点に効く支援を知らせる

希望進学先を変えた大学生は13.0%。奨学金や授業料減免の情報が、高校在学中のどの段階で本人に届くかで結果が変わりうる。地域の事業者や卒業生が、進学の選択肢を具体的に伝える場面がある。

卒業後・就職前の時期に接点を持つ

暮らし向きが最も苦しいのは求職活動中の層で、この時期は学校とも職場ともつながっていない。ジョブカフェのような就労支援の窓口に加えて、地域の側から接点を作る余地がある。

道北の大学に通う学生を地域の一員として見る

調査対象には名寄市立大学と稚内北星学園大学が含まれる。仕送りのやりとりが全くない大学生は63.7%にのぼり、生活費を自分で賄う学生が多数を占める。アルバイトの機会、住まい、食の支援は、地域の事業者が直接関われる領域にあたる。

学歴の差が残ることを前提に、その後の選択肢を用意する

働く若者の最終学歴が高校である割合は、母子のみ世帯で67.5%。就労後の学び直しや資格取得の機会が、この差に対して働きうる。

この数字の範囲

ファクト: 2019年度の調査で、コロナ禍の前にあたる。大学生は道内12校の各100名程度を対象としており、道内の大学生全体を代表する標本ではない。求職活動中の若者はジョブカフェ利用者に限られる。働く若者は経済団体等を通じたWEB回答で、配付数が特定できないため回収率は算出されていない。中3の頃の家族形態は回答者の記憶にもとづく。

参考文献