人手不足と人材確保

有効求人倍率は名寄管内で約1.60倍、稚内管内で約1.80倍。募集しても採用に至らない状態が常態化し、人手不足が事業継続そのものの制約になっている。

産業集積 全道道北
取組 3 道外 1 出典 2

現状

募集しても採用に至らない状態が、業種を問わず常態化している。介護・建設・運輸・観光 ( 旅館 ) では、受注や稼働の上限を決めるのが需要でなく人員数になっている。人手不足は待遇や採用手法の巧拙の問題である以上に、事業を続けられるかどうかの制約として現れている。

解釈の論点

道内平均の有効求人倍率は全国を下回るが、これを「北海道は人手が足りている」と読むと実態を取り違える。札幌に求職者が集中していることが平均を押し下げているためで、管内別に見れば道北は全国上位の売り手市場にある。地域の人手不足は、平均値でなく管内単位でしか見えない。

数字でみる

  • 1.22 ・ 日本全国の有効求人倍率 ( 2025年4月 )
  • 1.10 ・ 北海道の有効求人倍率 ( 同 )
  • 約1.60 ・ 名寄公共職業安定所管内 ( 同 )
  • 約1.80 ・ 稚内公共職業安定所管内 ( 同 )

構造を深掘る

数値で見る現状

2025年4月時点で、全国1.22倍に対し北海道は1.10倍。一方、道北の名寄管内は約1.60倍、稚内管内は約1.80倍で全国上位の水準にある。稚内管内の高さには風力発電関連の建設需要と観光需要が寄与している。道内平均が全国を下回るのは、札幌圏に求職者が集中していることによる。求職者の分布を考慮すれば、道北は絶対的な売り手市場にある ( ファクト: 厚生労働省 一般職業紹介状況、北海道労働局 管内別有効求人倍率 ) 。

中心の問い

人を採るのか、人を要らなくするのか。この二択を曖昧にしたまま採用活動を続けている事業者が多い。人口減少が続く地域で、採用競争に勝つ戦略は他地域・他社から人を移すことであり、地域全体では総量が増えない。問いを立て直すなら、この地域でこの事業を続けるために必要な人数は何人で、そのうち何人を採用で、何人を省力化と業務廃止で埋めるのか、になる。

なぜ起きるか ( 構造 )

三つの層が重なっている。第一に人口構造で、生産年齢人口の減少は採用市場の縮小として直接効く。第二に地域間の賃金差で、同一職種でも都市部との差が残る限り、求職者は流出側に動く。第三に業務設計で、多くの現場が「人がいた頃の業務量」を前提に組まれたまま更新されていない。

推論として、三つ目の層が最も手を付けやすいにもかかわらず後回しにされやすい。採用と賃上げは予算措置として意思決定しやすいが、業務を減らす判断は誰かの仕事を否定する形になり、組織内の合意形成が難しいためと考えられる。

アクター別の手段

事業者は、求人を出す前の業務棚卸し、職種別の全国相場に合わせた賃金設計、通年雇用が難しい業種での分割雇用・季節連携を持つ。行政は、リスキリング講座の運営 ( HICTA 等 ) 、外国人材の受け入れ後の生活基盤整備、住宅と就業をセットにした移住支援を持つ。個人は、副業・兼業・二地域居住による期間単位の参加、退職後の技能移転という関わり方を持つ。

これらは代替関係でなく、必要人数を分解したうえでの組み合わせとして機能する。採用だけ、省力化だけ、外国人材だけ、という単線の設計は、いずれも数年で頭打ちになる。

隣接する課題との関係

人手不足は単独の課題として解けない。介護分野では 介護人材の不足 と、運輸では 物流2024年問題 と、一次産業では 担い手不足・事業承継 と同じ構造を共有する。人材の供給側からは リスキリングシニアの第二のキャリア外国人住民の受け入れ移住定住 が接続する。どこか一つを解いても、他が詰まっていれば全体は動かない。

効きそうな打ち手

求人の前に業務を減らす

採用計画を立てる前に、やめる業務・頻度を落とす業務・機械に渡す業務を決める。必要人数を確定させてから市場に出る

賃金を地域相場でなく職種相場で設計する

地域内の横並びを基準にする限り、流出は止まらない。職種の全国相場を起点に、住宅・通勤・生活コストを含めた実質待遇で比較可能にする

通年でない担い手を制度に組み込む

副業・兼業・季節就労・二地域居住を例外扱いせず、複数事業者での分割雇用や季節連携として設計する

参考文献

道内の取組事例
IT・DX 人材育成と企業連携、リスキリング講座の運営 全道
HICTA ( 北海道 IT 推進協会 )
シニア起業・移住支援。退職後の職業人生を地域の担い手として設計し直す 全道
北海道・自治体
外国人住民への情報提供・多言語相談・日本語学習支援。受け入れ後の定着を支える生活基盤側の整備 道央
札幌国際プラザ
道外の取組事例
わたしたちにできること
  • 個人として ・ 人手を前提にしたサービス水準 ( 即日配送・24時間営業 ) を当然としない
  • 個人として ・ 地域の店舗・事業者の営業時間短縮や定休日増を、質の低下でなく持続の工夫として受け止める
  • 企業・組織として ・ 採用の前に、やめる業務を決める。求人票を出す前に業務の棚卸しをする
  • 企業・組織として ・ 賃金水準を地域相場でなく職種の全国相場で設計する
  • 企業・組織として ・ 通年雇用が難しい業種で、複数事業者による分割雇用・季節連携を検討する
  • 関わる人として ・ 副業・兼業・二地域居住で、通年でなく期間単位の担い手になる
  • 関わる人として ・ 退職後の技能を、指導・引き継ぎの形で地域の事業者に渡す
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