北海道の地域医療 - 無医地区137と医師偏在の構造

道内無医地区137、医師は札幌・都市部集中。地域医療を「個別の医師確保」ではなく、構造的な仕組みとして読み解く。

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課題発見

北海道には 無医地区が約137ヶ所存在し、医師の都市部集中が深刻だ ( 厚労省・2020年代調査 ) 。広域分散の地理と人口減で、地域医療の維持は構造的に難しくなっている。

「医師を呼ぶ」だけでは追いつかない。地域医療の構造的な仕組みづくりを読み解く。

1. 数値で見る現状

指標数値備考
道内無医地区約137ヶ所厚労省2020年代
医師の札幌集中約50% が札幌圏全国でも顕著な偏在
産婦人科・小児科の閉鎖増加傾向地方都市での影響大
医師の平均年齢 ( 地方 )60歳超の地域も後継者不在

医師数の総数は増えているが、地方・専門科の偏在は深刻化。

2. なぜ医師は地方に行かないのか

  • キャリア形成: 都市部の大病院で専門性を磨きたい
  • 子育て・配偶者の仕事: 地方では選択肢が狭い
  • 労働負荷: 地方1人医師は当直・救急・24時間対応
  • 医療設備: 高度医療機器・専門科連携が困難
  • 住居・生活: 地方の住宅・生活サービス

個別の要因ではなく、複合構造。給与だけ上げても解決しない。

3. 論点 - 個別医師確保か仕組みづくりか

論点: 「個別医師の確保」を最優先するか、「地域医療の仕組み」を作るか。

観点個別医師確保仕組みづくり
手段給与・住宅・子育て支援オンライン診療・役割分担・広域連携
時間軸短期で効くが個人依存長期で構造的に機能
持続性1人離脱で崩壊仕組みが回り続ける
コスト報酬競争で高コスト化初期投資後は効率的

個別確保と仕組みづくりは両輪。但し、現状は個別確保に偏りすぎている。

4. 5つの構造課題

  1. 医師偏在の極・道内医師の約半数が札幌圏に集中し、道北・道東は人口10万人あたり医師数が全国平均を大きく下回る。専門医確保は綱渡りが続く。
  2. 救急搬送の長時間化・過疎地から三次救急病院まで1-2時間かかる地域が広がる。心筋梗塞・脳卒中の予後を直撃する地理的制約。
  3. 当直・働き方改革の影響・2024年4月施行の医師の時間外労働上限規制で、中小病院の当直確保が一段と難化。1人医師体制の地域は持続が危うい。
  4. 専門医の高齢化と後継不在・地方の中核病院でも50-60代の専門医が中心で、産婦人科・小児科の閉鎖が相次ぐ。世代交代の仕組みが組めていない。
  5. 広域連携の限界・名寄市立総合病院や市立稚内病院が広域基幹を担うが、各町村の一次医療まで人と機能を届けきれず、点と線がつながらない。

5つは相互に絡み合う。1つの解決策では全体は動かない。

5. 道外・海外の参考事例

島根県・オンライン診療の先進地

離島・過疎地でオンライン診療を20年以上継続。専門医との連携・在宅医療と組み合わせ。

千葉県柏市・柏プロジェクト

UR・東京大学・柏市の連携で在宅医療・介護多職種連携モデル ( 15年継続 ) 。地域包括ケアの先行事例。

オーストラリア・北米の遠隔医療

広大な国土での医療提供にオンライン・ヘリ搬送・巡回医療を組み合わせ。北海道との地理的類似性。

6. 取り得る打ち手

短期 ( 1-3年 )

  • オンライン診療・遠隔医療の制度拡充
  • 看護師・薬剤師等の役割拡大 ( タスクシフト )
  • 地域医療を担う医師への複合支援 ( 給与 + 子育て + キャリア )

中期 ( 3-10年 )

  • 地域包括ケアの仕組み定着 ( 医療 + 介護 + 福祉 )
  • 広域連携・ハブ病院・サテライト構造
  • AI・DX を活用した医療効率化

長期 ( 10年以上 )

  • 「広域・過疎地でも医療アクセス保証」を制度的に定着
  • 次世代医療技術 ( AI 診断・ロボット ) の地域導入
  • 医師・看護師・介護士の世代継承の仕組み

7. わたしたちにできること

地域医療は「医師・自治体」だけの仕事ではない。日常の関わり方や予防医療で支えられる部分が多い。

個人として

  • かかりつけ医を持つ・不要不急の救急利用を控える
  • 予防医療・健康診断を継続的に受ける
  • 地域医療従事者への感謝・応援を伝える
  • オンライン診療・健康アプリの活用

企業・組織として

  • 従業員の健康診断・予防医療の促進
  • 地域医療プロジェクト・NPO への寄附
  • 医療人材の育成・雇用支援への協力

まとめ: 地域医療の維持は個別医師の確保では追いつかない。オンライン診療・役割分担・広域連携・多職種協働を組み合わせた仕組みづくり、そしてわたしたちの予防医療・関わり方が、長期的に支える基盤を作る。